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人にとって心地のいいこととは、障りのないことだと思う。目障りでないこと、耳障りでないこと、触れたときにとげとげしさがなくてスッと手になじむ感覚。その上、柔らかい空気に包まれたならば、人は誰しもきっと気持ちいいと思うに違いない。
デンマークにダイナオーディオというスピーカーがある。世界中の色々なレコーディングスタジオのモニターとして使われているこのスピーカーの特微は、とにかくニュートラルで素直な音色にある。何も尖ったところがない。メリハリが利いて押し出しが強いわけではない。しかし芯はしっかりとしていて、とにかく耳障りな音がしない。
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デンマークの国民性って、こういうものなのかという素直で良心的な音色である。このスピーカーの他にもB&Oのシンプルかつ斬新なオーディオを思い浮かべる人も多いことだろう。照明器具でも近代照明の父と呼ばれるポール・ヘニングセンが知られている。そうした生活センスの集大成であるデンマークの家も、良心を表したデザインが多いと思う。オーディンホームの住宅でまず感じたことは、目障りなものが少ないということであった。それはまずシンプルで温かみのあるデザインの統一感に現れていると思う。
そして、次に気づいたことは、耳障りな機械の音がしないということだった。普段、我々が生活している空間において一番耳障りな音は多分、エアコンやファンの音のような気がする。オーディンホームの住宅にはその音がない。しかし、快適な空気感に包まれている。温度計は20℃あたりを指していた。種明かしをすれば、これは床暖房のせいである。1階の床全体に敷き詰められた床暖房は蓄熱層を60℃の温水で24時間暖め、遠赤外線輻射熱を放射させて大井や床まで建物全体を暖めてしまうシステムである。そのため、床面は40℃に保たれ、素足になるとなんとも気持ちがいい。家の中の空気がフワッと温まっているので、この心地よさが生まれたのである。ファンの耳障りな音もしない。換気はできれば自然換気をすすめているという。当然、そのほうが身体のためにはいい。時折、窓を間けても、躯体全体が温まっているのですぐに元の温度に戻るという。こうした床暖房はコストの間題がネックといわれてきたが、真冬でも40坪の家で1日400円という、従来の4分の1〜5分の1というローコストを実現したところがポイントである。このなんともいえない心地よい空気感を手に入れるために、その費用は高いのか、安いのかを考えると、果たしてどうだろうか。
   
躯体全体を暖めるということは、シックハウス症候群になりにくいことも意味している。通風や換気をしていても、空気はどこかによどみ、そこに水分が結露してダニやカビの温床となる。しかし、躯体そのものが温まる形であれば、結露する場所は必然的に少なくなっていく。また、建材や接着剤、塗料、クロスなどにも天然索林を最大限採用しているため、ホルムアルデヒドなどの発生もミニマムに抑えている。人や環境にやさしい素材を使うことは、自動車にタイヤが4つついているのと同じように当たり前のこと、という意識であるらしい。さすがに、半島を通じて環境先進国のドイツと隣接している国の発想だけのことはある。人にやさしいということは声高に叫ばなくとも、さりげなくあるものなのだ。包みこまれるようなフワッとした心地いい空気感は、その証しである。
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| H11.9.Agora(JAL会員誌)にて掲載
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